染桶そめおけ)” の例文
『ははあ。糸を染めておいでなさるのだ。染桶そめおけがあるし、勾欄こうらんから紅葉もみじの木へ、すすぎあげた五色の糸を、懸けつらねて、干してもある。……はて、何とおとなおう。おどろかしてもよくないし』
向こうがわには、おどし谷の部落ぶらくをながめ、だれか渓流けいりゅうにくるのを待っていると、やがて二、三人の少女が染桶そめおけと糸のたばをかかえて、あかるい笑いをかわしながら、川床かわどこりてきたようす。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)