うら)” の例文
ただすぎたけうらに、さびしい日影ひかげただよつてゐる。日影ひかげが、——それも次第しだいうすれてる。もうすぎたけえない。おれは其處そこたふれたままふかしづかさに包まれてゐる。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ただ胸が冷たくなると、一層あたりがしんとしてしまった。ああ、何と云う静かさだろう。この山陰やまかげの藪の空には、小鳥一羽さえずりに来ない。ただ杉や竹のうらに、寂しい日影がただよっている。
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)