本石町ほんごくちょう)” の例文
逃げた奴はみんな無宿者むしゅくもので、京都無宿の藤吉、二本松無宿の惣吉、丹後村無宿の兼吉、川下村無宿の松之助、本石町ほんごくちょう無宿の金蔵、矢場村無宿の勝五郎の六人で、そのなかで藤吉、兼吉
半七捕物帳:64 廻り灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今日の東京の地図から云えば、日本橋区本石町ほんごくちょうを西の方へ向かって歩いていた。室町を経て日本橋へ出、京橋を通って銀座へ出、尾張町の辻を真直ぐに進み、芝口の辻までやって来た。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
竜閑橋りゅうかんばしから本石町ほんごくちょうまでの間——本銀町の一角を占めた宏大な構えですが、一と粒種の万吉が死んで、今朝はあわただしいうちにも、し付けられるような、陰気な空気に閉されております。
と、東儀与力はせわしげに後へ戻って、加山耀蔵ようぞうには、ここの後始末をいいつけ、波越八弥には、本石町ほんごくちょうの佐渡平の店へ行って、彼のうちを出た日の前後の事情を調べてくるようにいいつけて
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「明日さぶが来たら」と栄二は書き終った注文帳をおすえに見せて云った、「これは本石町ほんごくちょうの大和屋へ持っていって、十日以内にこれだけそろえてもらいたいと、注文するように云ってくれ」
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
本石町ほんごくちょうの金物店へはいった。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そして、十五夜の晩以来、お雪の家の中に隠されていた疵口きずぐちのないこの町人体ちょうにんていの男の死体は、本石町ほんごくちょう金座用達きんざようたしをしている両替りょうがえ佐渡屋和平さどやわへい、俗に佐渡平という商人にちがいないと申し立てた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ここに一札がはいっておる。これは、郁次郎が長崎表から江戸へ送り金をした為替札かわせふだです。即ち本石町ほんごくちょうの両替屋佐渡平さどへいの扱いで、この金札きんさつ持参の者へ、五十両相渡すべきものなりと書いてあります」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)