未亡人ごけ)” の例文
波斯ペルシヤで亭主に死別しにわかれたばかしの、新しい未亡人ごけさんを訪ねると、屹度きつと棚の上に大事さうに瓶が置いてあるのが目につく。
今も歌ふは当初そのむかし露友ろゆう未亡人ごけなる荻江おぎえのお幾が、かの朝倉での行違ゆきちがいを、おいのすさびにつらねた一ふし三下さんさがり、雨の日を二度の迎に唯だ往き返り那加屋好なかやごのみ濡浴衣ぬれゆかたたしか模様は染違そめちがえ
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「僕が友人の未亡人ごけさん達の世話を焼いてるのを、何とか言つてる人もあるさうなが、君は聴かんかい。」
それはあの人とあなたとが、未亡人ごけさんの處へ來た養子のやうになるとは、わたしも思つてはゐなくつてよ。年が寄つても氣が若くて、誰かと夫婦のやうにしてゐたいのです。それだから會計を
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
隅つこに小さくなつてゐた何家どこかの未亡人ごけさんが覚えずくすりと笑つたので、今度はその方へ捩ぢ向いた。
他でもない、波斯では未亡人ごけさんといふ未亡人ごけさんは、亭主に死別れてからは、毎日々々涙を一雫ひとしづくこぼさないやうに小瓶に溜めておいて、それが二本溜まると、喪をめる事になつてゐるからだ。