有髮うはつ)” の例文
新字:有髪
今までの打ちとけた艶容えんようが改まつて翳つた青い眉、激情にそよぐ睫毛まつげ、——有髮うはつの尼と言つた愼しみ深い姿になるのでした。
(定重は奧へゆかんとする時、奧より佐々木高綱は頭髻もとどりを切りたる有髮うはつ僧形そうぎやう。直垂の袴をくゝりて脛巾はゞきをはきたる旅姿にて笠を持ち出づ。あとより薄衣、與一、六郎、小萬等は打しをれて送り出づ。)
佐々木高綱 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
間もなくお富は若い有髮うはつあまとして隱居し、座敷牢から出された彌太郎は、何んの不都合もなく鳴海屋の主人としてやつて行くことになりました。
夫、順三郎の死後は、有髮うはつあまさながらの身持で、世間は申す迄もなく、屋敷の尊敬を集めて居る有樣です。
娘お秀は平次の情けに護られて、からくも繩目をまぬかれましたが、八五郎の心持を無視して、何處へともなく姿を隱してしまつたのです。多分有髮うはつあまで一生ををはるつもりでせう。