曹司ざうし)” の例文
やれ曹司ざうしの畳をよごしたのと、その度毎に、良秀々々と呼び立てゝは、兎に角いぢめたがるのでございます。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
時のみかど中宮ちゆうぐう、後に建禮門院と申せしは、入道が第四のむすめなりしかば、此夜の盛宴に漏れ給はず、かしづける女房にようばう曹司ざうしは皆々晴の衣裳に奇羅を競ひ、六宮りくきゆう粉黛ふんたい何れ劣らずよそほひらして
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
瀧口もやゝ哀れを催して、『そは氣の毒なる事なり、其の上﨟は何處いづこ如何いかなる人なりしぞ』。『人の噂に聞けば、御所ごしよ曹司ざうしなりとかや』。『ナニ曹司とや、其の名は聞き知らずや』。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
万事が、京都の自分の曹司ざうしにゐた時と比べれば、雲泥の相違である。が、それにも係はらず、我五位の心には、何となく釣合のとれない不安があつた。第一、時間のたつて行くのが、待遠い。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)