更闌かうた)” の例文
夜毎に更闌かうたけて人音も静まる頃となれば、この少年はひそかに町はづれの非人小屋を脱けいだいて、月を踏んでは住み馴れた「さんた・るちや」へ
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ふと醒覚したときは、もう更闌かうたけてゐるらしかつた。隣室に人の語る声がする。諦聴すれば主人柏軒と父楊庵とである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
西八條の花見の宴に時頼もつらなりけり。其夜更闌かうたけて家に歸り、其の翌朝は常に似ず朝日影まどに差込む頃やうやく臥床ふしどを出でしが、顏の色少しく蒼味あをみを帶びたり、終夜よもすがら眠らでありしにや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
天の月川の瀬照らす更闌かうたけてここにしぞ思ふ四方のしづもり
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)