是処ここ)” の例文
旧字:是處
つうちゃんも、可哀そうなことをしましたね」こういう言葉が其処そこにも是処ここにも交換とりかわされた。台所の方には女達が働いていた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
是処ここまで来ると水量は驚くほど増して、途中どんな大きな沢が加わったのかと不思議に思われるが、これは薬師岳の万年雪から滴る水の集りが注いだ為であろう。
黒部峡谷 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
こと是処ここのは荒神様あらがみさまで通っていますから、あの大きな御輿を町中ころがして歩くんです。しまいに、神社の立木へ持ってッて、輿をかつぐ棒までヘシ折って了う。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
姉さんにそう言ってくれ給え——もし達雄さんがこまって来たら、『窮るなら散々御窮りなさい……よく御考えなさい……是処ここは貴方の家じゃ有りません』
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
旦那様に取ては一生のうちに忘れられない日で、彼処あそこでも荒井様、是処ここでも荒井様、旦那様の御評判は光岳寺の鐘のように町々へ響渡りました。長いお功労ほねおりめはやす声ばかりで。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そんなことを言わないで、確かに是処ここで引受けて帰ってくれ」と言って、森彦は調子を変えて、「今日は、貴様は、ドエライやつを俺のとこへ打込みに来たナ——いや、しかし面白かった」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
青々とした芽は、其処そこにも、是処ここにも、頭をもちあげていた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)