旅行鞄トランク)” の例文
真先まっさきに来たのは白い革の旅行鞄トランクで、それがあちこちり剥けているところは、旅に出たのは今度が初めてではないぞといわんばかりだ。
が、逃亡のつもりで盗品全部はすべて旅行鞄トランクの中に納めてあったのだろう、さすがに出てきたのは貴金属類を除いた証拠品ばかり。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
でドーブレクを自動車に乗せまして、と申しても実は、旅行鞄トランクの中へ押入れまして、自動車の屋根の上へ乗せて、巴里パリーへ参る途中でした。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
さうして、その日の用意萬端は、とゝのつてゐた。少くも私だけは、最早何もすることがなかつた。私の小さな居間の壁際には、荷造りして、鍵をかけ、綱をかけられた旅行鞄トランクが、一列に並んでゐた。
旅行鞄トランクについで、木目もくめ白樺で象嵌ぞうがんをほどこしたマホガニイの手箱だの、長靴の型木だの、青い紙に包んだ鶏の丸焼だのが持ちこまれた。
中型の旅行鞄トランクが二つ、角から粗末なボール函をのぞかせた、思い出してほんのその辺で買ったといわんばかりの、紙包みが一つ。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
そう言いながら、彼はそこから肩掛ショールだの、ハンカチだのを、まるで自分の旅行鞄トランクからでも取り出すように無頓着に曳っぱり出したものである。
問題のボール函包みは無造作に網棚にほうり上げられてある。旅行鞄トランクの一つは足許あしもとに、もう一つの小型の方は、大切そうに脇に引きつけられてある。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
車を出迎えて扉を開いたユアンは、やがて旅行鞄トランクを書斎の中へはこび入れたのであったが、出て行こうとするそのユアンをさえぎって私は丁寧な礼をした。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
さて、馭者のセリファンは、朝早く例の半蓋馬車ブリーチカに馬をつけるように言いつけられた。ペトゥルーシカは宿に残って部屋と旅行鞄トランクの番をしておれとの命令だ。
そして給仕のユアンを呼んで、手廻りの物を旅行鞄トランクに詰めさせた。サンタルシアが丘の別荘へ行って、残りの四日間を過ごそうというつもりであった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
旅行鞄トランクの中から捜し出した*10ラワリエール公爵夫人の著書を読んだり、手箱の中からいろんな持物や書附を出して調べたり、二三の書類を改めて読み返してみたりしたが