斑痕はんこん)” の例文
妙な木製車のついている柱には、血汐の斑痕はんこんがありありと分るし、大きな銅鍋あかがねなべには、硫黄色の鉛が蚯蚓みみずのようにこびりついている。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蛇のごとく竜のごとき怪物のごとき斑痕はんこんがあるを見たが、生徒が雑巾ぞうきん掛けするときに、おもしろ半分にその雑巾を天井に投げつけた所が、かくのごとく怪物の形を印出するようになったそうだ。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
赤く血のしんだみみず色の斑痕はんこんがあるのです。
絨毯じゅうたんやふすまや障子にからびついている黒い血しおの斑痕はんこんは、すべて十五夜の晩に、鎧櫃よろいびつに入れて運び出された死笑靨しにえくぼかべていた美人——ここの女主人のお雪様の血しおと見ていい。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)