故郷おくに)” の例文
「いいえね、つい一昨日おとといあたり故郷おくにの静岡からおいでなすったんですとさ。私がお取次に出たら河野の母でございます、とおっしゃったわ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それが又おかしいのよ。故郷おくにの小唄ばかり入れさせられるのよ。故郷おくにの発音を西洋人が聞くとトテモ音楽的なんですってさあ。他の人が歌ったんじゃ駄目なんですって……」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ほんとに信州という国は、どこへ行ってもよい景色、眩惑めまぐるしいほどでございます。これから参るあなたの故郷おくにの木曽福島と申すところも、さぞよい景色でございましょう」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
天草へ行くのよ! あたしの故郷おくにへ! あそこは無数の島があって昔から奉行の手が届かないただ一つの隠れ場所なのよ。そしてあたしの家にいらっしゃい! そしてしばらく様子を
「ええ。故郷おくに発程たつまでに、もう一遍御一緒に来て下さいよ、後生ですから」
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
こいつが故郷おくに土産みやげになる価値といったら誠に莫大なもので
他事ひとごとながらいたわしくて、記すのに筆がふるえる、遥々はるばる故郷おくにから引取られて出て来なすっても、不心得な小説孫が、かたのごとき体装ていたらくであるから
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「えッ。いつ故郷おくに立発たつんですッて」と、吉里は膝を進めて西宮を見つめた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)