操人形あやつりにんぎょう)” の例文
夜、この村で操人形あやつりにんぎょうがあると言うので、二人で見に行くことにした。晩餐ばんさんがすむと、S君の襟巻を借りて、それで頭からスッポリと包んで目ばかり出した。
土淵村にての日記 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
彼は此等これらの光景が見えなくなろうとする前、今一度振向いて最後の瞥見べっけんをなした。操人形あやつりにんぎょうの様な紳士は降り立っても同じ事を繰返して居た。刑事と車掌は何か云ってった。
乗合自動車 (新字新仮名) / 川田功(著)
しかし後には立派な操人形あやつりにんぎょうの座元が出来まして、諸国を興行して廻るという事になりました。
こっちではけんを打ってる。よっ、はっ、と夢中むちゅうで両手を振るところは、ダーク一座の操人形あやつりにんぎょうよりよっぽど上手じょうずだ。向うのすみではおいおしゃくだ、と徳利を振ってみて、酒だ酒だと言い直している。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昨日きのうまで舞台に躍る操人形あやつりにんぎょうのように、物云うもものうきわが小指の先で、意のごとく立たしたり、寝かしたり、はては笑わしたり、らしたり、どぎまぎさして、面白く興じていた手柄顔を、母も天晴あっぱれと
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)