撰択せんたく)” の例文
旧字:撰擇
撰択せんたくと云う事が、あながちに甲はとる、乙は捨てると云う意味だと思うと誤解が生じやすうございますからちょっと弁じておきました。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
生活に懐疑と倦怠けんたいと疲労と無力さとをばかり与える日常性をのみ撰択せんたくして、これこそリアリズムだと、レッテルを張りめぐらして来たのである。
純粋小説論 (新字新仮名) / 横光利一(著)
かまへ可慎つつましう目立たぬに引易ひきかへて、木口きぐち撰択せんたくの至れるは、館の改築ありし折その旧材を拝領して用ゐたるなりとぞ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
今は貴嬢あなた真正ほんたうに貴嬢の一心を以て、永遠の進退を定めなさるべき時機である、——愛の子か、のろひの子か——けれど君の姉さんが此際、撰択せんたくの道をあやまつ如き
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
挿絵はその本がもつ内容の懺悔ざんげである。撰択せんたくにおいて著者はついに彼自身を偽ることができない。何故なら挿絵において著者は彼の直観を修飾することはできないからである。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
(少なくとも実際上)ジェームスと云う人が吾人の意識するところの現象は皆撰択せんたくたものだと云う事を論じているうちに、こんな例をげています。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
説明の道具に使われる材料もまた同じ態度で撰択せんたくしたものでありますから、つまりは同じ事だろうと思います。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)