拳固こぶし)” の例文
そう思い返しながら、われとわが拳固こぶしをもって自分の頭をなぐって、はやり狂う心のこまつなぎ止めたのであった。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
庄次郎は、石みたいな拳固こぶしに襟を噛まれながら、首をすくめて、お喜代の後ろ姿を見ていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの何時いつも静かな微笑をたたえて、頭を撫でてくれたり、抱いてくれたりした父親が、ともすれば最愛の、いたいけなせがれ拳固こぶしを上げたり、かと思えば、何やらぶつぶつ独り言をいって
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「一つ、この拳固こぶしを、馳走してやろうか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)