拔刀ぬきみ)” の例文
新字:抜刀
叔父の與三郎は、物も言はずに、お信をかき退けると、拔刀ぬきみを葛籠から引き拔いて、二三度手を滑らせ乍ら、あわて氣味に蓋をあけました。
「いや、この儘では、大井久我之助樣もお氣がお濟みになるまい。拔刀ぬきみで脅かされた私も、町人ながら諦めきれません」
見ると今まで藤屋彌太郎の入つて居た棺には、背後うしろの板を突き貫いて、血だらけの拔刀ぬきみが五六寸、壇の灯を受けて、紫色になつて居るではありませんか。
綱の端は舞臺の上を通つて樂屋の二階のはりに結ばれたものですが、その梁のところの結び目に、拔刀ぬきみの匕首を挾んであつたさうで、綱の上に乘つて、いろ/\の藝をしたお鈴が
「ツイ今しがた、拔刀ぬきみで俺を追つかけた浪人だ。あれは滅多に間違へる人相ぢやねえ」
そして、自分の持つて居た拔刀ぬきみで首筋をつらぬいて、聲も立てずに死んでしまつたのです。
鞘を洗ふやうに、右手にそつと置いた來國俊の拔刀ぬきみ、そのまゝ引つ掴んで立上つた富山七之助、物も言はさず、障子から顏を出して笑つて居る秋山彌十の面上へ存分に喰はせたのです。
その後を追つて部屋に入り、直八がお駒を抱へ込むすきに、其處に置いた拔刀ぬきみを取つて、後ろから刺し、息の絶えるのを見ると、何とはなしに下手人を誤魔化ごまかすつもりで、再び死體に目隱しをさせ
お信が立ちすくんだのも無理はありません。押入の下の段に入れてあつた大一番の葛籠つゞらは蓋をしたまゝ、上から拔刀ぬきみがズブリと突つ立つて、葛籠から漏れた血が、押入の床板を赤黒く染めて居るのです。
丹之丞の手には早くも拔刀ぬきみが、つらねた灯にギラリと光ります。
「親分の前ぢやねえ、拔刀ぬきみの前で腰を拔かしたらう」