抜駈ぬけが)” の例文
旧字:拔駈
陽には磊落らいらくらしく見えて実は極めて狭量な神経家たる紅葉は美妙が同人に抜駈ぬけがけして一足飛びに名を成したのを余り快よく思わなかったらしい。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
むしろその恬淡てんたんさに、重盛のほうが抜駈ぬけがけされたような心地だった。父の顔はそれを云ってしまうと、さばさばと朝らしいりを顔脂かおあぶらに見せているのだった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その許しもないのに死んでは、それは犬死いぬじにである。武士は名聞みょうもんが大切だから、犬死はしない。敵陣に飛び込んで討死うちじにをするのは立派ではあるが、軍令にそむいて抜駈ぬけがけをして死んでは功にはならない。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)