抜手ぬきで)” の例文
旧字:拔手
向岸むこうぎしへ急ぎますと、勇助は泳ぎを知らんどころでは有りません至って上手で、抜手ぬきでを切って泳ぎながら
私は浅い水を頭の上まではねかして相当の深さの所まで来て、そこから先生を目標めじるし抜手ぬきでを切った。すると先生は昨日と違って、一種の弧線こせんえがいて、妙な方向から岸の方へ帰り始めた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
青白く長き手に抜手ぬきできつて泳ぎつつ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
沼の中へさかとんぼうを打っておちいりましたが、此の車夫は泳ぎを心得て居ると見え、抜手ぬきでを切って岸辺へ泳ぎ附くを、又作が一生懸命に車の簀蓋すぶたを取って、車夫の頭をねらい打たんと身構えをしました。