手織てお)” の例文
しかし奥羽おうう地方の人たちは、つい近ごろまで冬も麻を着ていた。そうしてかれらの手織ておりには、そんな薄い布は入用がなかった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「こりゃ手織ておりね。こんない着物は今まで縫った事がないわ。その代り縫いにくいのよそりゃあ。まるで針が立たないんですもの。おかげで針を二本折りましたわ」
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いかにも商家の旦那らしい、地味な手織ておりの羽織をかけて、こういいつけた秦野屋九兵衛は
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その態度はもう、中学生だぞといわんばかりで、手には新らしい帽子ぼうしをもっていた。磯吉のほうも見なれぬ鳥打帽とりうちぼうを右手にもち、手織ておじまの着物のひざのところを行儀ぎょうぎよくおさえていた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)