成道なりみち)” の例文
さっき大急ぎで今松ひとり、入谷の師匠の所を飛び出し、佐竹の寄席へ駆けつけると、お艶も二軒目のお成道なりみちの席をすまして入ってきた。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
それからお成道なりみちへ戻って、狭い西側の横町のどれかを穿うがって、矢張やはり臭橘寺の前に出る。これが一つの道筋である。これより外の道筋はめったに歩かない。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
妻恋からお成道なりみちへ出て、二人は無口に歩きつづけた。お綱のいそいそと燃えてゆく気持は、自然と足を早くさせ、万吉が密かに持つ苦労は、ともすると遅れがちの足どりになった。そしてやがて
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はなしかの柳家なにがしらとお成道なりみちなる祇園ぎおん演芸場へ出演せしが席への途次みちすがら今年ことしの干支なる羊或は雪達磨の形せる狸に破れ傘あしらひたるなど、いとおほいなる雪人形をみいでたり。
滝野川貧寒 (新字旧仮名) / 正岡容(著)