懐鏡ふところかがみ)” の例文
旧字:懷鏡
ハンカチイフもて抑へければ、絹の白きに柘榴ざくろ花弁はなびらの如く附きたるに、貴婦人は懐鏡ふところかがみ取出とりいだして、むことの過ぎしゆゑぞと知りぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それは、よほど洒落人しゃれびとか都人でなければ持たぬような印金の袋に入った小さい懐鏡ふところかがみだった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで奥さんも絵本を渡したり、ハモニカをあてがつたり、いろいろ退屈させない心配をしたが、とうとうしまひに懐鏡ふところかがみを持たせて置くと、意外にも道中だうちうおとなしく坐つてゐる事実を発見した。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
小菊は懐鏡ふところかがみを取り出して、指先で口紅を直しながら
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)