憤恨ふんこん)” の例文
武道の執念しゅうねん栄辱えいじょく憤恨ふんこん、常日頃の沈着を失った平馬は、いまは、両眼に、大粒な口惜し涙を一杯に浮かべてさえいる。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
勿論、惣右衛門の下向は、主家没落以来の憤恨ふんこんの火の手を、いちど、消し伏せるためだった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
痛嘆すべきこの二つの歴史は、畿内の山河さんががいつも自分に向つて消極的教訓を語るに反して、長崎の風景に対して一種名状しがたき憤恨ふんこんと神秘の色調を帯びさせてゐるやうに思はれる。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
遠州榛原はいばら郡金谷宿の言伝えに、昔この地に住みし長者愛娘まなむすめを某池の大蛇に取られ憤恨ふんこんに堪えず、多くの蹈鞴師を呼び寄せて一時に銕を湯にかしてその池に注いだ(河村多賀造氏談)。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼の胸は、激烈な憎悪と、憤恨ふんこんとにげるのである。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)