憎態にくてい)” の例文
と大円房は憎態にくていな嘲笑を泛かべながら下知した。と、ばらばらと立ち上がった柿山伏の門輩どもは、一人の新九郎の手を取り足をすくって玄関口より引き摺りだして
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ちぇっ、『ミーチェンカてば!』だとよ」と彼は、奧さんの金切聲を憎態にくていに眞似ながら、くってかかった、「それも人なかでよ、いけ圖々しいったらありゃしねえ!」
腰には今にも輪のまゝにすつぽりとずり落ちさうな太い黒色のメリンスの兵児帯を憎態にくていに巻きつけ、おまけに棒のやうに貧弱な脚の先きには、武骨な庭下駄を突ツかけてゐたのである。
環魚洞風景 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
真っ先に開いたは「鏡山かがみやま」で、敵役かたきやく岩藤の憎態にくていで、尾上おのえの寂しい美しさや、甲斐甲斐しいお初の振る舞いに、あるいは怒りあるいは泣きあるいは両手に汗を握り、二番目も済んで中幕となり
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
憎態にくていにせせら笑った。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「云うわ、憎態にくていを」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)