愛著あいちゃく)” の例文
この価格は好尚の価格または愛著あいちゃくの価格(prix d'inclination ou prix d'affection)
女たちは、唯功徳の為に糸を績いでいる。其でも、其が幾かせ、幾たまと言う風にたまって来ると、言い知れぬ愛著あいちゃくを覚えて居た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
お絹の悲しさはおさえがたき愛著あいちゃくに変ってくる。高い杉のこずえから流れてくる月光の下でお絹はぴったりと藤作によりそった。
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
その度毎に住み馴れた土地に対する愛著あいちゃくと、未知の土地に対する不安とが、常に私の心を元の所に引止め、私の身体を縛りつけてしまうのであった。
早稲田神楽坂 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
其の「直接じかに感じられるもの」とは何か、といえば、それは、「私が最早一旅行者の好奇の眼を以てでなく、一居住者の愛著あいちゃくを以て、此の島と、島の人々とを愛し始めた」
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)