意馬心猿いばしんえん)” の例文
あまりの美しさ! あまりにもあでやかな眺めに、門之丞はしばし、その血管内に荒れ狂う意馬心猿いばしんえんもうちわすれ、呆々然ぼうぼうぜんとして見れたのでした。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
僕は色気が無いどころか、大ありだった。それこそ意馬心猿いばしんえんとでもいうべき、全くあさましい有様だったのだ。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
意馬心猿いばしんえんとやらが浅間しく乗り移った、さかりのついた雌犬同然さ——それで、悪いかえ? 悪いといったって、今更、どうにもあとへは引けないんだから——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
それから意馬心猿いばしんえんという事、『類聚名物考』に、『慈恩伝』に〈情は猿の逸躁を制し、意は馬の奔馳ほんちつなぐ〉、とあるに基づき、中国人の創作なるように筆しあれど
彼の心にも住む意馬心猿いばしんえんは、彼を、寧子の家のほうへ駆りたてていた。そして、世間によくある深窓の灯をうかがう不良児と、何ら変らない恰好かっこうして、藤吉郎も、その家の垣の外をうろついていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
汪克児オングル 英雄、色を好む。(ちょいと天幕を指さしてウインクする)いかな大王も恋には弱い。意馬心猿いばしんえん追えども去らず、あわわわわわ。(あわてて口を押さえる。誰も相手にせず)
あるいは、イムポテンツか、或いは、実は意馬心猿いばしんえんなりといえど如何いかんせんもてず、振られどおしの男のように思うひともあるかも知れぬが、私は決してイムポテンツでもないし、また、そんな
チャンス (新字新仮名) / 太宰治(著)
意馬心猿いばしんえん——というすがたである。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)