悪強わるじ)” の例文
もうこれが悪強わるじいの最初ではないかと思われて、その馬子の面を見たのですけれど、主人の話しぶりを見ても、その人柄を見ても、性質たちの悪い馬子とは見えません。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
叔母はいつものようにお延に加勢かせいしなかった。さればと云って、叔父の味方にもならなかった。彼女の予言をいる気色けしきを見せない代りに、叔父の悪強わるじいもとめなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
悪強わるじいして無理に筆を持たせる者などがいなかったのは、武蔵にとっては幸いであった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
由良は手でシナをしながら、悪強わるじいにかかった。うるさくなったのか、坂田は椅子をひっぱって、テーブルと脇卓の間に掛けた。芳夫の顔に、まずいところへすわられたという、当惑の色が浮かんだ。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)