悪口あくたい)” の例文
旧字:惡口
それはどっちにしたって構わないが、自分がこの悪口あくたいを聞いたなり、おとなしく聞き流す料簡りょうけんと見て取った坑夫共は、面白そうにどっと笑った。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
悪口あくたいは君達の礼儀であり、野性は君達の生命である。無所有が即ちその財産で、労働が即ちその貨幣である。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と言つた調子で、松太郎は、継母ままははでもあしらふ様に、寝床の中に引擦り込んで、布団をかけてやる。渠は何日いつしか此女を扱ふ呼吸こつを知つた。悪口あくたい幾何いくらいても、別に抗争てむかふ事はしないのだ。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、やっぱり囲炉裏のそばへ坐ったまま、大きな声でなぐさめている。慰めてるんだか、悪口あくたいいているんだか疑わしいくらいである。坑夫から云うと、どっちも同じ事なんだろう。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かしらですらこれだから、ひらの坑夫は無論そう野卑ぞんざいじゃあるまいと思い込んでいた。だから、この悪口あくたいやぶからぼうに飛んで来た時には、こいつはと退避ひるむ前に、まずおやっと毒気を抜かれた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)