心構こころがまえ)” の例文
彼はそれを忌々いまいましく思い、その反動として、今度は、伯父の死についてあくまで冷静な観察をもち続けようとの心構こころがまえを固めるのである。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
かれはそれを知らぬでもなかったが、そういう心構こころがまえをするだけの多少の気力も、体力と共に失われていて、かれにはその時頼みにする何物もなかったからである。
この年九月十五日に、保のもとに匿名の書が届いた。日を期して決闘を求むる書である。その文体書風が悪作劇いたずらとも見えぬので、保は多少の心構こころがまえをしてその日を待った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
久しぶりにて御休息のため、お奥に於て、厚き心構こころがまえ夕餉ゆうがれいの支度が出来た。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)