御油ごゆ)” の例文
さては五十鈴いすずの流れ二見ふたみの浜など昔の草枕にて居眠りの夢を結ばんとすれどもならず。大府おおぶ岡崎御油ごゆなんど昔しのばるゝ事多し。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
天竜川では橋銭を取られ、御油ごゆの町では、キャラメルを買おうとしたが、どこにもなく、鉄砲玉を十銭買って間に合わせた。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ふりだしの日本橋に鰹うりの絵のついてたことも、「御油ごゆ」を「おあぶら」と読んで笑はれたこともおぼえてゐる。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
芭蕉の句に、夏の月御油ごゆより出でて赤坂あかさかや……だが、そんな風流気は、いまの主水正主従にはございません。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いつかは、何かの新聞で、東海道の何某なにがしは雀うちの老手である。並木づたいに御油ごゆから赤坂あかさかまでく間に、雀のもの約一千を下らないと言うのを見て戦慄せんりつした。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また、「妹も吾も一つなれかも三河なる二見ふたみの道ゆ別れかねつる」(同・二七六)というのもある。三河の二見は御油ごゆから吉田よしだに出る二里半余の道だといわれている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それから、関、亀山かめやま四日市よっかいち、桑名、宮、岡崎、赤坂、御油ごゆ、吉田、蛸は大威張りで駕籠にゆられて居眠りしながら旅をつづけた。宿に着けば相変らず夜ふかしと朝寝である。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
夏の月御油ごゆより出でて赤坂や 同上
発句私見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
駕籠から首をつき出した田丸主水正、「おいっ! 早籠はやじゃ。御油ごゆまでなんぼでまいるっ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
夏の月御油ごゆより出でて赤坂あかさか
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
御油ごゆ——名物は甘酒に、玉鮨たまずしですな。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)