往還ゆきき)” の例文
五日も七日もこう降り続くと、どこの道もまるで泥海のようであるから、勤人つとめにんが大路の往還ゆききの、茶なり黒なり背広で靴は、まったく大袈裟おおげさだけれど、狸が土舟というていがある。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここに兄はいなびて、弟に貢らしめたまひ、弟はまた兄に貢らしめて、相讓りたまふあひだに既に許多あまたの日を經つ。かく相讓りたまふこと一度二度にあらざりければ、海人あまは既に往還ゆききに疲れて泣けり。