往復ゆきかえり)” の例文
独逸語の先生のところへの往復ゆきかえり、この飾窓の前に立つ十五分ぐらいの時間が、長い間、キャラコさんのひそかな楽しみになっていた。
恋しい人の縁で荒い山路やまみち往復ゆきかえりすることを何とも思わなかった薫は、この時になって宇治という名を聞くことさえいやであるように思った。
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
いいえ、いつも一人で往復ゆきかえりします時は、馴れて何とも思いませんでございましたけれども、なまじおつれが出来て見ますと、もうさびしくって一人では帰られませんから
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一日の内に東京から往復ゆきかえりが出来まする事で、追々開けて参りました故、これからは鉄道が日本国中へ蜘蛛の巣を掛けた様になりますそうですが、マアの位便利になるか知れませんが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「だって、往復ゆきかえり共電車ですもの」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
人形町居廻いまわりから築地辺、居酒屋、煮染屋にしめや出入でいり往復ゆきかえり、風を払ってしましたわ、すると大変。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この絵のおかげで、ドイツ語の先生のところへ行く往復ゆきかえりが、一層楽しいものになった。
勇士はくつわの音に目を覚ますとか、美人がふすまの音に起きませぬよう、そッと抜出して用達しをしてまいり、往復ゆきかえり何事もなかったのでありまするが、廊下の一方、今小宮山が行った反対の隅の方で
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)