影護うしろめた)” の例文
(同新聞、人物、人事に就きて逍遙先生に寄すと題したる文及此頃の文學界)かくてなほハルトマンを祖述すといはむはいとなん影護うしろめたかるべき。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
我は人の思はん程も影護うしろめたくて、手もて額を拭ひつ。こは帽を脱したるは、少女のためならで、暑に堪へねばぞと、見る人におもはしめんとてなりき。
然れども流石年来としごろ頼める御仏に離れまゐらせんことも影護うしろめたくて、心と心との争ひに何となすべき道も知らず、幼きより頼みまゐらせたる此地こゝの御仏に七夜参の祈願を籠めしも
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
再びマリアの面を見んは影護うしろめたき限なれども、アヌンチヤタの爲めにも我が爲めにも天使に等しきマリアに、一ことの謝辭を述べずして止まんやうなし。
その癖硬派たるが書生の本色で、軟派たるは多少影護うしろめたい処があるように見えていた。紺足袋小倉袴は硬派の服装であるのに、軟派もその真似をしている。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
我に一杯ひとつきの酒を飮ませ給ふとも、誰かはそを惡しき事といはん。何故に君は我がそこに入らんとするをこばみ給ふぞ。新婦。否、かく夜ふけておん身と物言ひ交すだに影護うしろめたき事なり。
流石に心細きことのみ多きこの程なれば、出で行く跡に殘らんも物憂かるべく、又停車場にて涙こぼしなどしたらんには影護うしろめたかるべければとて、翌朝早くエリスをば母につけて知る人がり出しやりつ。
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
流石に心細きことのみ多きこの程なれば、出で行く跡に残らんも物憂かるべく、又停車場にて涙こぼしなどしたらんには影護うしろめたかるべければとて、翌朝早くエリスをば母につけて知る人がりいだしやりつ。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
最終の言葉を出だすものには、必ず多少の影護うしろめたきところあり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
果は最終の言葉を出さむことの影護うしろめたさをさへ打ち忘れてなむ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)