弾音たまおと)” の例文
パン、パンッ、と二つ三つ、弾音たまおとが宵の空にこだました。強右衛門は、藁屋根わらやねの下から脱兎のように駈け出すと、近くの桑畑へ駈けこんだ。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、槍を高く振って、炎々と焼けている部落の真ん中を駈け通って、敵の弾音たまおとも、また、わらう声も背にして、潮のように退いて行った。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西側の雑木林から、秩序のない弾音たまおとが、ぱちぱちと聞える。赤いほたるのように見えるのは、敵の散兵が、火縄を持って駈けまわる火であろう。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じゃくとして弾音たまおと一つしない。これが戦場かと疑われるほどである。蟷螂かまきりひとつ枯草へすべり落ちた音すらカサリと耳につく。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
歯がみをして、小六が、峰に立っていると、突然、四方の山のこだまを呼んで、グワーン! と一発の弾音たまおとがした。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……あの弾音たまおとがそれでございましょう
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)