弘誓ぐぜい)” の例文
「まことに、仔細しさいなき坊守ぼうもりよな。綽空の望みも、これで一つとどいた。弘誓ぐぜいの海はまだ遠いが、本願の大船は、ひとまず、おかに浪をいこうがよい……」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仏の教えでは『到彼岸とうひがん』ということを申しまして、人を救うてこちらからあちらの岸に渡すのを舟にたとえてございます、善巧方便ぜんきょうほうべんを以て弘誓ぐぜいの舟にたとえているのでございます
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わしはこの船が地獄じごくに苦しむ罪人を迎えに来た弘誓ぐぜいの船のような気さえしているのだ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
無垢の本土に返らせ玉はむこそ願はまほしけれ、やがては迂僧も肉壊骨散にくゑこつさんの暁を期し、弘誓ぐぜいの仏願を頼りて彼岸にわたりつき、楽しく御傍に参りつかふまつるべし、迷はせ玉ふな迷はせ玉ふな
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「乗る舟は弘誓ぐぜいの舟、着くは同じ彼岸かのきしと、蓮華峰寺れんげぶじ和尚おしょうが言うたげな」
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「俊寛が乗るは弘誓ぐぜいの船、浮き世の船には望みなし。」
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)