“延(えん)” の例文
いつみても、臙脂(えんじ)いろの毒の花に、甘粘(あまねば)い蜜をたたえているようなお延(えん)は、湯上がりの濃粧(のうしょう)を籠行燈(かごあんどん)に浮き立たせて、肱(ひじ)かけ窓から、前の小六を流しめに見ていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お延(えん)ですよ。蘭谷(あららぎだに)の山荘で、初めて会った時からザッと五年越し、いまだにお前さんを想いつづけている私を忘れちゃ、幾ら何でも可哀そうじゃありませんかえ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お延(えん)は立膝(たてひざ)の前へ、鏡台を引き寄せた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)