うまや)” の例文
すなわち横を正面とすれば在方の農家と同じく、玄関と勝手口が並んで狭い庭に面し、うまやと便所と物置とが各別棟で、その外にわずかに菜園がある。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その中には母屋だの隠居所だの、うまやだの下男たちの小屋だのが建っていたし、広い柿畑さえ取入れてあって、その柿畑のうしろはそのまま段登りに、深い松林で山へと続いていた。
春いくたび (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そうして私を人の居ないうまやの横に連れ込んで、今一度そこいらに人影の無いのを見澄ましてから、内ポケットに手を入れて、手紙の束かと思われる扁平ひらべったい新聞包みを引き出しますと
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
峠には此の二軒のほかに、別な納戸なんどうまやも無い、これは昔からうだと云ふ。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うまや天窓てんまどから、お屋敷の下男が頭を出し、歯をいている——
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
主人が憎まれている家ばかりはカセギドリの若い者が入ってきてあばれ、うまやの前にある木櫃を伏せて、杖でその底を突き立ててスワクエスワクエといった。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そうして何事と驚く家の者には一言も云わず、剣を腰に吊るして外套を着て帽子をかむるが早いか、うまやへ行って馬を引き出して鞍も置かずに飛び乗りますと、イキナリ馬の横腹を破れる程けり付けました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
古くはこれを遠戸とおと近戸ちかとと言っている。正面は平坦であるから門をなるだけ遠方に置き、外人の進入にひまを取らせる。いわゆる遠侍・遠うまやはその方面を守らせたものである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
裏手のうまやへ来て馬丁を呼んで「瞬」を引き出させました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)