府尹ふいん)” の例文
そのあくる朝の事だ。善後の処置について御相談したい事があるからというので、釜山府尹ふいん官舎の応接間に呼び付けられてみると、どうだい。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
獄は、開封かいほう奉行所の構内にある。時めく高家から下げられた罪人だし、罪状云々しかじかとあっては、ただ、首斬れといわぬばかりな囚人だ。しかし府尹ふいんの職として、そうもならない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここは全南の都で町々はにぎわう。私たちは泉屋旅館に旅装を解いた。夜は料亭春木楼で松本知事主催の歓迎宴が吾々のために設けられた。知事始め、内務部長、府尹ふいん、その他光州知名の紳士列席。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
府尹ふいんは怒って叱った。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
さはいえ五路ごろの顔役、鄭の遺族や乾分こぶんには財力もある暴力もある。また旅籠はたごの魯家からも、同時に大げさな訴えが州役署へ出されていた。当然、府尹ふいんもこれは捨ておけなかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昼は思いがけなく府尹ふいんである未知の増田道義氏から饗応きょうおうを受けた。これも不思議な縁であった。柳の朝鮮に関する著書が仲立ちであった。私たちは旧知の友の如く、心おきなくお互に語り合った。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
府尹ふいんは怒ってしかった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)