店借たなが)” の例文
魚屋の裏に金サンの家作があって、トビの一家が店借たながりをしている。そのまた二階を間借りしているのが天元堂という易者であった。
町内の二天才 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
なんでも奥州の白河とか二本松とかの藩中であったそうですが、何かの事で浪人して、七、八年前から江戸へ出て来て、親子ふたりでここに店借たながりをしていました。
怪談一夜草紙 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
雀も決して住居の方に、鶏見たように呑気のんきでないことは、早く巣作るものが形勝けいしょうと安全とを先占せんせんし、よっぽど遅くなってから、巣箱の店借たながりに来るのでも察せられる。
で、前原は米屋五兵衛と変名へんみょうして、相生町三丁目に店借たながりして、吉良邸の偵察に従事するし、神崎は美作屋みまさかや善兵衛と名告なのって、上杉の白金の別墅べっしょにほど近い麻布谷町に一戸を構えた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
どういうものか自分はここだけ、よその商人が店借たながりして入り込んでいる気がする。どうしてこの洋品部が丸善に寄生あるいは共生しているかという疑問を出した時にP君はこんな事を言った。
丸善と三越 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
※の荒物屋からは、どんな小作も「店借たながり」をしている。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)