左甚五郎ひだりじんごろう)” の例文
左甚五郎ひだりじんごろうは恐らく仕上ばかりに苦心したのでなく、細工さいくしているあいだも精神をめたればこそ、その霊魂たましい彫刻物ちょうこくぶつにも移ったのであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
左甚五郎ひだりじんごろうからかささ。そら、『からかさはこの上にあり』と書いてあるだろう。この建築が出来上った時左甚五郎が彼処あすこへ傘を置き忘れて来たのさ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今に左甚五郎ひだりじんごろうが出て来て、吾輩の肖像を楼門ろうもんの柱にきざみ、日本のスタンランが好んで吾輩の似顔をカンヴァスの上にえがくようになったら、彼等鈍瞎漢どんかつかんは始めて自己の不明をずるであろう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仕事がなければ左甚五郎ひだりじんごろうだって袖乞いのようなことをしたじゃないの
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そのときの狂言は「布引滝ぬのびきのたき」の実盛物語、「千本桜せんぼんざくら」の鳥居前、「八百屋お七」の人形ぶり、「太功記」十段目、「左甚五郎ひだりじんごろう」の京人形などで、ほかに何か浄瑠璃物が付いていたように記憶している。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかしてその人間の製造法に就いては、更にこれを三大別することが出来ようと思う。例を取って説明すれば、その一はかの左甚五郎ひだりじんごろう式である。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)