崛起くつき)” の例文
「日報」の爲に恐るべき敵の崛起くつきするのを妨げる最良の手段であると云ふのが此人の對「毎日」觀であつた。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
富嶽駿河の国に崛起くつきせしといふ朝、彼は幾億万里の天崕てんがいよりその山巓さんてんに急げり、而して富嶽の威容を愛するが故に、その殿居にとゞまりみて、遂にた去らず。
富嶽の詩神を思ふ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
戦国の群雄が素懐そくわいとした上洛の理想は、尾張に崛起くつきした織田信長によつて遂げられたが、かうして、一躍新武家時代の寵児となつた信長は、上洛の栄誉をると同時に
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
何よりもこの地の代表的な物は山城の宇治に於ける宇治川と鳳鳳堂との如く、ロアル河の明媚な景勝と市街の上に崛起くつきして居るカテドラルの物寂びた十三世紀の古塔とである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
さては和尚も苔むしたかと思はれるほど、その逞しく巨大な姿は谷底に崛起くつきする岩石めき、まるまると盛りあがる額も頬も、垢にすすけて、黒々と岩肌の光沢を放つばかりであつた。
閑山 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「日報」の為に恐るべき敵の崛起くつきするのを妨げる最良の手段であると云ふのが此人の対「毎日」観であつた。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)