山姥やまんば)” の例文
もう二、三日で盆休みが来るという七月九日の午すぎに、歌女代はとうとう精も根も尽きはてて、山姥やまんばを踊りながら舞台の上にがっくり倒れた。
半七捕物帳:05 お化け師匠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何と見えます——俳優ともつかず、遊芸の師匠ともつかず、早い話が、山姥やまんば男妾おとこめかけの神ぬしの化けたのだ。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また普通の凧の絵は、達磨、月浪つきなみ童子格子どうじごうし、日の出に鶴、雲龍うんりゅう玉取龍たまとりりゅうこい滝上たきのぼり、山姥やまんばに金太郎、あるいは『三国志さんごくし』や『水滸伝すいこでん』の人物などのものがある。
凧の話 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
私は、幼時、金太郎よりも、金太郎とふたりで山にかくれて住んでいる若く美しい、あの山姥やまんばのほうに、心をひかれた。また、馬に乗ったジャンダアクを忘れかねた。
俗天使 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「山霊訶護かご」という題で、山姥やまんばが木に寄掛っていると、其処に鷲が来て、それに対して山姥が山の小動物をかくまっている態のものだが、これは父が苦しんで一所懸命やった彫刻だった。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
山姥やまんばといふものは猿も同然だ。
和好は踊りの素養も相当にあって、山姥やまんばや関兵衛なども平気でやってのけた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わたしたちの招待日は三月二日で、芝居は午前九時開場、狂言は「廿四孝にじゅうしこう」と「山姥やまんば」と「お染久松」とで、粂八は八重垣姫と山姥を勤めていたが、どちらの役も無論に団十郎張りであった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一座は前に言った家橘、松之助、菊四郎などに沢村源之助が加入していたが、座方ざかたの側では又三郎を呼び物にしていたらしく、かれは一番目に「酒井の太鼓」を出し、浄瑠璃に「山姥やまんば」を見せていた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)