居縮いすく)” の例文
「貝を吹き旗差し物をかざし、進む者がなければいけないのだ。でなければいつまでも悪い浮世は悪い浮世のままで居縮いすくんでしまう」
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
城中に居縮いすくんでばかり居ては軍気は日々に衰えるばかりなゆえに、北条方にさる者有りと聞えた北条氏房が広沢重信をして夜討を掛けさせた時と
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一時あまりも狂い廻わると、さすがの宮廷闘牛も、居縮いすくんで了ったではございませんか。それから大木でも倒すようにたおれて了ったではございませんか。
闘牛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こう手をのばして、グルグルと、彼らの頭の上の方へ、一つ大きな円を画いたら、刀を持った十人も、藪の向うの十人も、そのまま居縮いすくんでしまったのじゃ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
(あの角の向こう側にこそ)こう思うと、居縮いすくむのであった。ほんのさっきまで、左門など何者ぞと、気負い込んでいた彼の自信も勇気も、今は消えてしまった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「血がね、なるほど、なくなりましたかね。で、なんですかい、ネロちゃんが、居縮いすくんでしまったとおっしゃるので。ネロもよくねえ、たのみ甲斐がいがないや。ヤイ、ネロめエーッ」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼はにわかに首をちぢめ、肩を下げせなを曲げ、何者かにお詫びでもするように、居縮いすくむような格好をしたが、時綱と頼春とに背を見せて、館の方へクルリと向き、元の寝所の方へ走り出した。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「やられる、やられる!」と居縮いすくまった。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「後へは帰れぬ、同じことになる! 先へも行けぬ、取り込められる! と云ってここで居縮いすくんでもいられぬ! どうしたものだ! どうしたものだ! ……だんだん火事が大きくなる! 浜路殿やお仙はどうしたろう! おおそうして仁右衛門殿は? ……」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)