居合抜いあいぬき)” の例文
旧字:居合拔
道節も宝刀をひねくり廻して居合抜いあいぬきの口上のような駄弁をろうして定正に近づこうとするよりもズドンと一発ブッ放した方が余程早手廻しだったろう。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
芸者が来たら座敷中急に陽気になって、一同がときの声をげて歓迎かんげいしたのかと思うくらい、騒々そうぞうしい。そうしてある奴はなんこをつかむ。その声の大きな事、まるで居合抜いあいぬき稽古けいこのようだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
近くの居合抜いあいぬきに、大勢人がたかっています。鳩の餌を売るお婆さんの店が並んでいて、その上の素焼の小皿に、豆や玄米が少しずつ入れてあるので、その上へ鳩が来ると、短い棒でそっと追います。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
すべてのうちで最も敬太郎の頭を刺戟しげきしたものは、長井兵助ながいひょうすけ居合抜いあいぬきと、脇差わきざしをぐいぐいんで見せる豆蔵まめぞうと、江州伊吹山ごうしゅういぶきやまふもとにいる前足が四つで後足あとあしが六つある大蟇おおがまの干し固めたのであった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)