しがい)” の例文
そこで岸へ這いあがっていると一つのしがいが流れてきた。それは自分のれていた従僕げなんの少年のしかばねであった。陳は力を出して引きあげたが、もう死んでいた。
西湖主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
日を期して二人はひつぎを持って出かけていった。嬰寧はいばらの生い茂った荒れはてた中を指さした。掘ってみると果して老婆のしがいがあった。皮膚も肉体もそのままであった。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
七郎は血の中に倒れていたが手にはまだ刀を握っていた。邑宰は足を止めて精しく見ていた。と、七郎のしがいが不意に起きあがって、邑宰の首を斬ったが、それが終るとまたたおれた。
田七郎 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
翁は厚くもてなして逗留とうりゅうして子供を教えさせようとした。金は両親の消息が解らないので、いって探ろうとしていたから決しなかった。その時網で老人と老婆のしがいきあげた者があった。
庚娘 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「林児は何ものかに殺されて、しがいが野の中にころがっております。」
田七郎 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
人びとは一緒に王母子のしがいしらべた。窓の上に一つのはこがあった。開けて見ると庚娘の書いた物があって、くわしく復讎ふくしゅうの事情を記してあった。皆庚娘を烈女として尊敬し、金を集めて葬ることにした。
庚娘 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
そのうちに子供のしがいを井戸の中に見つけた。そこで怒りは悲みとなって大声を出して泣き叫んだ。夫婦はその悲みのために物も食わないで向きあって坐って、すがるものもないような気持ちであった。
促織 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)