寵幸ちょうこう)” の例文
かつて、白河上皇の寵幸ちょうこうをうけた身であるというほこりが、かの女の心の骨格になっているらしい。すぐ、白河の御名おんなを口に出す。
二葉亭の家では猫は主人の寵幸ちょうこうであって児供が翫弄おもちゃにするのを許さなかった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
実際、右衛門にはなんの罪もないのだが、右衛門の寵幸ちょうこうと今川家の退廃とが同時に起ったので、単純な世人はその前に因果関係があると思ったのである。実際彼は一人の無邪気な少年に過ぎない。
三浦右衛門の最後 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
こうして兵の案内でそぞろ黒木の御所へ登って行く自分を知れば、ほかの妃たちがきっと今夜の自分の寵幸ちょうこうねたましい眼で眺めるにちがいない。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幼帝近衛は、美福門院の生むところであるから、かの女は、鳥羽の寵幸ちょうこうに加えて、いまはまた、天皇の御母でもある。
末の妹の勾当ノ内侍も後宮に入って、あまたな妃嬪ひひんのうちでさえかがやく寵幸ちょうこうを身一つにほこっていた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
召されて、宮中に入り、帝の寵幸ちょうこうをたまわってから、やがて身は懐妊かいにんのよろこびを抱いていた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寵幸ちょうこう、ただならぬものがあったが、鳥飼の離宮には、ほんの夏の一ときだけしかおいでがないので、南院の七郎という者にいいつけて、平常にも白女の生活を、何くれとなく
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
忘れかねるという想いを率直に忠顕へ洩らしただけのことである。もしこの勾当の内侍がみかどにとって寵幸ちょうこうもただならぬ愛妃あいひであったとしたら、それをねだッた自分はいとも罪深い者になろう。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)