寓話ぐうわ)” の例文
それらは『西遊記』と仏説寓話ぐうわとで養われた荒唐な少年の日の夢に、益々ますます非科学の拍車をかけるような結果に陥ってしまった。
簪を挿した蛇 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
『だれも異教徒の寓話ぐうわを信じはしないが、それでいて、我々はいつもうっかり、それらの寓話を実在するものと思って、それらから推論をする』
自分の短篇の中でも、ずっと昔の「ねじけジャネット」や、この寓話ぐうわなど、作者の最も好きなものだ。南海を舞台にした話だから、案外土人達も喜ぶかも知れない。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
歴史上の事件や寓話ぐうわに材を借りて、半ばそれを記述しつつ情象するのである故に、より純一の立場で見れば、真の徹底したる主観でなく、より歴史や小説に近いところの
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
「自分の墓をわれわれの短い記憶のなかに見出みいだした。そして、われわれもまたあとに残った人のなかに埋もれてゆくであろうと悲しげに教えている」歴史は次第にぼんやりして寓話ぐうわになる。
この世界は一つの寓話ぐうわに過ぎないのですよ、釈尊は最も譬喩ひゆをよく用いました、おそらく釈尊ほど卓越した修辞家はありますまい、また、古来のあらゆる作家よりも優れた作家は即ち釈迦です
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もちろん、寓話ぐうわ作者としてはここで老名人に掉尾ちょうび大活躍だいかつやくをさせて、名人の真に名人たるゆえんを明らかにしたいのは山々ながら、一方、また、何としても古書に記された事実を曲げる訳には行かぬ。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)