寄木細工よせぎざいく)” の例文
何処の家でも舎楼(サラン客席)でも太い框の間に小きざみに張られたこの板の床は、どんな立派な寄木細工よせぎざいくよりも美しい感じを受ける。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
中村不折氏が子供の寄木細工よせぎざいくのやうな文字を書いて、「六てうだ、六朝だ。字は何でもかう書かなくつちや。」
その花瓶の向うの寄木細工よせぎざいくの板壁の隅に小さな虫喰いみたいな穴が二つ三つ出来ております。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
大きなモロッコ皮の椅子いすと言い、あるいはまた滑かに光っている寄木細工よせぎざいくゆかと言い、見るから精霊せいれいでも出て来そうな、ミスラ君の部屋などとは、まるで比べものにはならないのです。
魔術 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
主人は無言のまま座に着いて寄木細工よせぎざいく巻煙草まきたばこ入から「朝日」を一本出してすぱすぱ吸い始めたが、ふとむこうすみに転がっている迷亭の帽子に眼をつけて「君帽子を買ったね」と云った。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小林君もその部屋にはいってみますと、それは書斎とでもいうような大きな洋室でピカピカ光った寄木細工よせぎざいくの床、壁には書棚があり、正面にたたみ一じょうもある、大きな机がすえてあります。
黄金豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そういうものを振り廻して、お前はお前の寄木細工よせぎざいくを造り始めるのだ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
神奈川県で第一に推さるべきものは箱根の寄木細工よせぎざいくであります。相模さがみの国が吾々にお与えている唯一の立派な手工藝でしょうか。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)