宿坊しゅくぼう)” の例文
併し、女人にょにん堂を過ぎて平地になった時には、そこに平凡な田舎村が現出せられた。駕籠のおろされた宿坊しゅくぼうは、避暑地の下宿屋のようであった。
仏法僧鳥 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「私は濡れても天日てんぴで干すわさ。いや、またまこと困れば、天神様の神官殿別懇かんぬしどのべっこんじゃ、宿坊しゅくぼうで借りて行く……南無妙、」
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宿坊しゅくぼうの高い屋根をかすめて、さっと風が吹きおろして来、彼のはかまたもとをたたいた。新八はちぢみあがった。
これは、上野宿坊しゅくぼう院代いんだいへ問い合せた上、早速愛染院に書き直させた。第三に、八月上旬、屋敷の広間あたりから、夜な夜な大きな怪火が出て、芝の方へ飛んで行ったと云う。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)