家刀自いえとじ)” の例文
そうでなくとも若い人たちは、前の家刀自いえとじが家を支配する限り、昼は別れて山鳥の生活をするように、日本の婚姻制はできていた。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それへ上手じょうずに灰を掛けて、朝は真赤なおきになっているようにして置く事が、今でも家刀自いえとじ技倆ぎりょうであり、また威望の根拠でもあるごとく見られていた。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「何昔がよかろうか」というに炉の向こうにいた家刀自いえとじが「琵琶びわにスルスでも語らねか」と言ったとある。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
何の故に山の神たる者がかくのごとく、人間の家刀自いえとじの必ず持つべきものを、手草たぐさにとって舞うことにはなったのか。それがまず決すべき問題だといわねばならぬ。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これに反して俳諧は、なんでもないただの人、極度に平凡に活きている家刀自いえとじ、もっと進んでは乞食こじき盗人ぬすっとの妻までを、俳諧であるが故に考えてみようとしているのであります。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)