室々へやべや)” の例文
ポートサイドの町々は電燈の火華ひばなに装飾されて、龍宮城のように美しくなった。だから、勿論、水夫合宿所の室々へやべやの窓からも燈火の光が、さも愉快そうに射し出ていた。
死の航海 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
怠惰たいだは許されない。閑居は与えられない。一日のうち多く暮すのは家族の住まえる室々へやべや、忘れられず用いらるる食卓の上、忙しき台所の棚。彼らの多くは不断遣いや、勝手道具。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
書斎の机でも寝室でも意外に質素なもので驚きました。二階の室々へやべやにはいろいろな遺物など並べてありますが、私にはゲーテの実験に使った物理器械や標本などがおもしろうございました。
先生への通信 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
水へ向いた室々へやべやの窓や障子に、燈火ともしびの光が橙色だいだいいろにさして、それが水面に映ってもいた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一日のうち多く暮すのは家族の住まえる室々へやべや、忘れられず用いらるる食卓の上、忙しき台所の棚。彼らの多くは不断遣いや、勝手道具。したがって生活は質素であり多忙である。懶惰らんだいとまはない。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
奥深い大奥の室々へやべやはやがてひとしきり静まった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)