室々へやへや)” の例文
四時半にはモウ共立病院の室々へやへや洋燈ランプの光が華やぎ出して、上屐うはぐつの辷る程拭込んだ廊下には食事の報知しらせの拍子木が軽い反響を起して響き渡つた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
だだっ広い家の踏めばぶよぶよと海のように思われる室々へやへやの畳の上に蛞蝓なめくじの落ちてうようなことも多かった。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
名音は変だから続いて縁側へ駈けあがって、室々へやへやの障子を開けて見たが怪しい男の姿は見えなかった。名音は鬼魅きみが悪いので自分の室へ入るなり寝床の中へもぐりこんだ。
法華僧の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そんな事ではなかなかしません、しばらく、室々へやへやの壁を叩いたり床板を踏んだり、電灯をつけて見たり、額の裏をのぞいたりして居りましたが、フト思い付いたように
古銭の謎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)